給装研の活動

給装研の目的とするものは、給水装置に関する知識の向上と、会員相互の情報交換を図ることです。 この目的に向かって、これまでの給装研では、様々な活動をしてきました。 そして、自主グループとしての組織に変わっても、同一の目的を掲げ、新たな活動を展開していきます。

《 従前組織での活動 》

これまでの組織は、会員全てが水道事業体の給水装置担当の職員であり、給水装置窓口業務において、 統一した認識を持ち、お客様や指定事業者への対応を行うために、窓口業務、事例研究、流量計算勉強会などの勉強会を毎年、独自に開催してきました。 また、工場等の視察、交流会の開催など、一連の活動を通して会員相互は太いパイプで結ばれ、 些細なことでも気軽に他市町の給水装置担当者に聞くことができ、 誰もが丁寧に答えてくれる良い関係を築いてきたことで、会員の知識の向上が図れたとともに、お客様の満足度向上にもつながりました。

窓口業務勉強会
第56回全国水道研究発表会
《 新たな組織での活動 》

今後の活動は、給水装置に関しての疑問や給水装置をもっと知りたい、こんなケースの場合はどうなのか、トラブルを回避するにはどうしたらよいのか、等々、 限られた会員にとどまらず、給水装置に関係する皆さんに少しでも参考になる活動を展開します。

1 ホームページの開設

今までの給装研が蓄積してきた全てを公開します。

    [1] 給水装置用語集

    経験を通しての私たちの言葉で綴った用語集を掲載します。

    [2] 事例集

    今まで私たちが悩んできた事例について、成功例や失敗例などを交え掲載します。

    [3] 流量計算の基本

    数多くの勉強会で使用し、実績を築き上げてきた流量計算テキストを掲載します。

    [4] 新製品、新技術の紹介

    検証を重ねた上で、給水装置材料や器具等及び全国の水道事業体で採用している技術などを紹介します。

    [5] その他

    参考になると思われるQ&Aやお問い合わせに対してのアドバイスを掲載します。

2 共同研究

既存の給水装置材料や器具、新製品、そして新たな技術開発について、メーカーや水道事業体とともに研究を進めます。

3 勉強会・講習会

給水装置に関する勉強会や講習会を開催します。

4 情報交換

給水装置に関しての意見や思いを語り合う情報交換の場を設定します。

研究・開発

1 検満切れメータの防止対策
2 無線検針を使用したサービス
3 新JISメータについて

 1 検満切れメータの防止対策  ― 老朽配管補強による対応 ―

計量法では、水道メータの検定期間が8年と定められており、この検定期間の満了を迎える前に、新たなメータに取り替えなければなりません。このため、各水道事業体では、毎年、計画的に該当するメータ(検満メータと呼ばれています)の取替えを行っています。ここで問題となるのは、取替えが不可能な場合です。例としては、家屋の改造などにより、現在の設置位置でのメータ取替え作業が困難となった場合や、中高層の集合住宅のパイプスペース内に設置された子メータで、メータ周りの配管が老朽化しており、メータ取替え作業に伴い漏水の発生が予測される場合です。建物所有者に対し、再三、改善のお願いはしているものの、費用面などから中々進まないのが現状ではないでしょうか。
検定期間を過ぎたメータ指針からの計量水量をもって使用水量とし、料金を算定することはできません。この場合、使用水量を認定することが必要となり、前回、前年同期、過去1年間などの使用水量から算定することになります。これでは、事務の効率性を欠くばかりか、水道使用者であるお客さまからの信頼を失う結果になりかねません。
そこで、集合住宅においての老朽化した配管が原因で取替えることのできないメータについて、老朽管を補強する比較的簡単な作業で、メータの取替えが可能となる一つの手法を報告します。

○ 漏水用補修材を使用した老朽配管の補強及びメータの取替え

〈写真1〉施工前

     パイプシャフト内に設置されているメータであるが、周りの配管、特にねじ部が相当腐食しており、漏水の恐れがあるため、メータ用袋ナットを回すことができない状況である。


〈写真1〉
〈写真2〉施工前(準備)

     施工個所の防寒材を除去する。


〈写真2〉
〈写真3〉下地処理

     施工個所の凹凸部分を専用パテで解消する。


〈写真3〉
〈写真4〉補修材の施工

     補修材を巻きつける。


〈写真4〉
〈写真5〉補強完了

    メータソケットからエルボまで補修材を巻きつけ、一体化させて補強完了。


〈写真5〉
〈写真6〉メータ取替え

    補修材が硬化した後、新たなメータに取替える。(写真1~5とは、別な箇所)


〈写真6〉

○ 採用にあたっての考え

1 所有者が行う老朽管の取替えに期間を要する場合、検定期間満了までに、メータを取替えることが大前提であることから、公費をもって施工する。
2 しかしながら、メータ周りの老朽管の取替えは、所有者の責任において行われなければならず、公費をもって配管替えすることは問題である。
3 仮に公費で配管を替える場合、老朽化の度合いによって対象となる範囲が異なり、場合によっては大規模な工事となってしまう。
4 それに対し、補修材による補強は、あくまで応急的措置であり、早い時期での所有者責任による配管替えが担保される。
5 但し、補強に当たっては、所有者の同意をもって行い、施工後における漏水発生についての責任を明確にすることが必要になる。※確認書などで、同意並びに施工後の確認立会、施工後の責任範囲を明確にする。
6 この手法は、配管替えに比べ、建物全体などの断水を要さず、作業が容易であり、安価である。

 2 無線検針を使用したサービス  ― 選択制のサービス ―

 今後におけるお客さまの満足度を向上させる一つの手法として、無線検針を使用したフィールドテストを実施しました。その検証結果から、新たなサービスの展開について報告します。

(1)フィールドテスト

① 集合住宅における検証
 12階建て集合住宅において、170個の各戸メータ、4個の共用メータ、1個の親メータ、計175個のメータについて無線検針を行い、通常検針との時間比較などを行い、無線検針の信頼性及び効率性、課題等を検証しました。
② 一般住宅における検証
 上記集合住宅の一戸に協力をお願いし、無線を使用した水量管理など、一般住宅での活用について検証しました。
③ 事業所における検証
 市役所及び小学校2校の大型メータについて無線検針を行い、活用にあたっての有効性を検証しました。
④ 検針困難個所における検証
 集合住宅の親メータφ75㎜2個、共用φ25㎜5個が植え込みの中に設置されており、樹木等の管理がなされていないため、検針困難対策として、それぞれに無線隔測表示器を設置し検証しました。

(2)検証結果

  ① 集合住宅

ア 無線子機設置状況の確認
(パイプシャフト内バルブと減圧弁の間に設置)
イ 無線通信状況及び通信可能距離の確認
(建物を階層別等5つのエリアに分け測定)
ウ ハンディーターミナルでの無線検針状況
(ハンディーターミナルでの
無線一括検針と通常検針との比較を行う)
エ 通常検針状況(ハンディーターミナル)
(通常検針では、メータ点検後、検針、
ハンディーターミナル入力、検針票投函の一連を行う)

ア 設置状況
 パイプシャフト内の無線子機の設置は、結束線を用いれば容易に取付け可能であり、地上型メータボックス内では、子機自体水に浮く構造にはなっていますが、無線通信状況の確保の点から、ボックス蓋裏に固定することが望まれます。
イ 通信状況
 今回の12階建てで見通しの良い駐車場からの検針では、60mでの検針が可能でした。但し、パイプシャフト内に物を置かないことなどが条件となります。また、親メータについては、地上型ボックスの蓋が鋳物であることから、通信距離は30mでした。

ウ・エ 無線検針と通常検針の比較

エリア

対象

件数

所用時間

不可件数

再検針時間

合計所用時間

1

1,2階+共用

36

3分05秒

3

2分13秒

5分18秒

2

3,4階

40

3分24秒

0

―――

3分24秒

3

5,6階

38

3分16秒

0

―――

3分16秒

4

7,8,9階

40

3分33秒

3

9分03秒

12分36秒

5

10,11,12階

20

2分29秒

3

2分19秒

4分48秒

 

174

15分45秒

9

13分35秒

29分20秒


※ 不可件数は、1回目の検針で検針不可であった件数。
※ 再検針時間は、不可件数の再検針に要した時間。
※ 所要時間、再検針時間には、ハンディーターミナル操作時間及び移動時間を含む。
検針不可は、角部屋のため階段室やエレベーター室が通信の障害となったもので、その他地上共用栓メータにおいて、通過自動車が障害になったものです。
通常検針では、検針票の投函を含め、今回の174個の検針に要した時間は2時間20分でした。今回の無線検針では、検針票のプリントアウト、投函を行っていないため、この分として40分を加算(検針員の推測値)すると計70分となり、通常検針に比べ半分の時間での検針が可能と思われます。

  ② 一般住宅

 ア 一般住宅での無線を使用したシステム


     居室内で無線親機にインターネット接続データロガー(IP型送信機)を接続し、パソコンを使用して月、日、時間ごと等の使用水量の管理を行うことができ、漏水の早期発見や不用使用の防止など家計負担の軽減に有効であることが確認できました。また、インターネットを接続することにより、離れた場所からの使用水量を確認することができ、このことは、お年寄り世帯の見守り的な活用に十分期待できるものです。


イ 居室内での使用状況の確認
(無線子機にIP型送信機を接続し、パソコンで水道使用状況を確認)

  ③ 事業所

 ア 事業所での無線を使用したシステム


 イ 小学校での使用状況

(木、金曜日の使用に比べ、当然ながら土、日曜日の使用は少ないが、このグラフから土曜日の9:00と17:00に時間200ℓの校外活動での使用が見られ、また、水使用の無い時間帯に時間30ℓの水量が連続して見られることから、同量の漏水が発生していることが推測される)


 公営、民営を問わず、一定の水道使用がある事業所では、水道メータ口径も大きいことから水道料金が多額になるケースが多く、中には、給水設備も複雑化しており、老朽化なども相まって漏水に気がつかないことも多いものと思います。
 今回は、小学校及び市役所の既存メータを利用し、無線システムを使用して使用水量の管理を行ったところ、漏水を発見できたとともに、休日における校外活動で使用される水量についても確認することができました。無線システムを使用することで、大型メータ(φ50㎜以上)に電子メータを採用していれば、配線等の工事が必要なく、管理する事務室での使用水量の管理・把握、漏水の早期発見が可能となります。

  ④ 検針困難箇所

 検針困難メータ(普通メータは電子メータ に取替え)に無線子機を取り付け、検針が容易な箇所に無線隔測表示器(写真は、無線親機内蔵の表示器)を設置し検針します。本来ならば、水道使用者等の責任において、検針可能となる処置をしなければなりませんが、改善等に時間を要する場合は、大変有効な対応策となります。
 また、検満を迎える隔測表示器付きのメータ(電子メータの場合)を取り替える際には、配線及び電線管補修等の工事が必要なく、水道使用者及び検針員にとって最適な箇所への表示器設置替えが可能となるなど、維持管理面からも経済性からも有効な方策となります。


ア 無線隔測表示器による検針
(検針困難なメータ7個に無線子機を取り付け、無線隔測表示器にて離れた場所で、容易に検針)

  ⑤ その他(インターネット利用による検証)

 ア インターネットを使用してのシステム


 上記の一般住宅並びに学校等での検証を基に、インターネットに接続することにより、サービスの拡大が図れることになります。今回のフィールドテストに協力いただいたメーカーの長野県工場の使用水量を、インターネットを介して容易に見ることができ、その有効性を確認しました。
 このシステムを用いることにより、一般住宅では老人世帯などの見守り的機能が付加されることになり、事業所においては、本社にて支店や営業所などの水道使用状況を一括して管理することが可能となります。

(3)まとめ

 今回の無線検針を使用したフィールドテストから、今後の水道事業におけるサービスのヒントが見出せました。経済面及び環境に配慮した効率的な水使用に関するサービスの提供、オートロック式ドア設置に代表されるプライバシー保護の観点からのサービスの提供、お年寄り世帯等への見守り的サービスの提供など、今後は、従来型の均等なサービスから一歩踏み出し、お客さまが一定の負担をすることで選択できるサービスの提供も視野にいれることが求められるのではないでしょうか。

 以上の「無線検針を使用したサービス -選択制のサービス- 」については、水道新聞社発行の「水道公論」平成21年5月1日号に詳しく掲載しています。

 3 新JISメータについて

 新JISメータについては、平成18年3月に日本水道協会で作成した「水道メーター選定の手引き」に詳細が記されていますが、その後の情報などを交え説明します。

 水道メータの国際整合化などを図るため、平成17年3月にJIS規格が制定され、このJIS規格を引用するため、計量法の省令である「特定計量器検定検査規則」が平成17年3月30日に一部改正されました。
 このことにより、平成23年4月からはすべて新基準のメータとなり、これまで使用している旧基準のメータの製造及び検定は、平成23年3月31日までとなります。現在採用している水道メータの購入仕様などの変更が必要となりますので、早めの検討が求められます。

1 スケジュール

2 改正の主な内容

 特定計量器検定検査規則(通称「検則」といいます。)の改正により、従前と異なり、新基準では、計量法にJIS規格(JIS B 8570-2)を引用することになります。

(1)流量に関する用語、定義の改正

 ○旧基準と新基準の比較

旧基準

新基準

定 義

最大流量:Qmax

限界流量  :Q4

短時間の間、検定公差内で作動することが要求される最大の流量

標準流量:Qp

定格最大流量:Q3

検定公差内で作動することが要求される最大の流量

転移流量:Qt

転移流量  :Q2

Q3とQ1の間にあって大流量域・小流量域の2つの領域の区分する境界の流量

最少流量:Qmin

定格最少流量:Q1

検定公差内で作動する最少の流量



 ○器差性能図(器差曲線等の比較)

(2)性能基準

 メータの性能は、上記器差性能図のとおり、新基準のメータは、主に小流量域で5%の器差範囲が狭まり、2%の器差範囲が広がることで、精度のレベルが上昇します。これは、旧基準の検定では、QminとQmaxの間の任意の2点での流量検定であったものが、新基準では、Q1と1.1×Q1の間、Q2と1.1×Q2の間、0.9×Q3とQ3の間と指定された3点での流量検定になることから、精度レベルが上がります。

(3)メータの選定基準

 旧基準(現在)では、型式別(接線流羽根車式など)メータの口径ごとに標準流量、最大流量、最少流量等が決まっており、メータを採用するに当っての購入仕様では、型式とメータ口径を定めることで、自ずと標準流量等が定まっていましたが、新基準では、口径別の概念がない(注1)ことから、型式と性能の基準となる定格最大流量Q3及び計量範囲Q3/Q1(通称R値といいます。)、そしてメータ取付部の口径(給水管口径)を定めることになります。
(注1)口径別の概念がない … 今回の改正は、メータの検定・検査のための技術基準を国際技術基準に整合化させることを目的としており、これには口径別によって計量範囲や性能が規定されるといった概念はありません。新基準でのメータの選定に当っては、当該給水管の口径(メータを取り付ける箇所の口径)で、使用実態などから、定格最大流量Q3○○㎥/h、計量範囲Q3/Q1○○など○○の部分を指定し、選定することになります。
 すなわち、従前の基準では、例えば、口径20㎜のメータ(接線流羽根車式)は、その性能として標準流量2.5㎥/h、使用最少流量0.05㎥/h、転移流量0.2㎥/hと決まっており、使用実態などからこの標準流量等を必要とした場合、口径20㎜のメータを選定することになりますが、新基準では、給水管の口径(メータを取り付ける箇所の口径)を20㎜とした場合、その口径での必要とされる性能、例えば、定格最大流量Q3が4㎥、計量範囲Q3/Q1が100(定格最少流量を0.04㎥/hとした場合が100で、0.05㎥/hとした場合は80となる)のメータを選定することになります。
 このようなことから、口径別の概念はないとしていますが、実際には、メータの取付部の口径は必要であり、メータにも表示されることになっています。しかしながら、メータ口径(取付部の口径)だけでは、必要とするメータの選定はできず、Q3及びQ3/Q1の性能基準を特定することがメータの選定に求められます。

3 新基準への対応(準備)

 今回の検則の改正に伴い、平成23年4月からは、すべて新基準のメータとなるため、それに向けての準備が必要になります。水道事業体では、採用するメータの選定、それに伴う購入仕様書の改正、場合によっては、条例の改正も念頭に置かなければなりません。また、指定給水装置工事事業者及び給水装置工事主任技術者においては、新基準メータの性能を十分理解した上での、給水装置の設計が求められます。

(1)選定メータ(性能基準)の特定

  使用するメータの選定あるいは、各水道事業体で採用するメータの選定に当っては、当該給水装置の使用実態などからメータを特定することが求められます。検則に引用されるJIS(JIS Z 8601)では、定格最大流量Q3が1.0、1.6、2.5、4、6.3、10 ・・・・・1,000、2,500、4,000、6,300、計量範囲Q3/Q1が10、12.5、16、20   ・・・・63、80、100、125 ・・・・400、500、630、800の標準数列となっており、これらの性能基準から選択しメータを選定することになっています。但し、どれでも選んで構わないということにはならず、そこには、メータの型式(接線流羽根車式、たて型軸流羽根車式、横型軸流羽根車式、電磁式など)やメータ取付部の口径、そして、メーカーの製造態勢などにより、自ずと限られた範囲でのメータを特定することになります。
  今回、JIS規格の引用は、JIS B 8570-2 の技術基準となっていますが、JIS B 8570-1 付属書B(参考)には、当面のメータ選定に当っての代表的な性能要件(Q3、Q3/Q1)が示されています。これには、従前の性能と新基準での性能が対比して示されており、従前のメータ性能でほぼ満足するとした場合、選定にあたっての有効な参考となります。
  例として、接線流羽根車式メータで、給水管の取付部の口径が20㎜の計量特性は次の表となっています。

  代表的な型式に関する計量特性(参考)      単位㎥/h



メータ
ケース
(付属書A)


流量特性


計量値


線羽
流根
  車
  式

20㎜

現行法及び規格・仕様

min
0.05

t
0.2

p
2.5

max
5

計量特性
(代表例)

/Q1=R

80

0.050

0.080

4

5.00

100

0.040

0.064

4

5.00

 この表から、従前の口径20㎜に代わるメータとしては、R値(Q3/Q1)が80と100のメータがあり、どちらも転移流量(Q2)が従前に比べ小流量となっていることから性能が良くなっていますが、R値100の方は定格最少流量が小さく、計量範囲が広くなるいため、さらに性能が良いことがわかります。
 メータの選定に当っては、上記表を参考にするとともに、メーカーの製造態勢の確認も必要になってきます。平成21年9月現在、新基準水道メータの型式承認登録状況(日本水道協会ホームページ「新JISメータへの対応について」資料5「製造業者へのヒアリング」に掲載)では、R値が100のみとなっていますので、実際の選定に当っては、今後の日本水道協会からの情報やメーカーからの情報を確認することが必要となります。

(2)購入仕様

 各水道事業体で採用するメータについて、従前の購入仕様書などを新基準に合わせたものへの変更が必要になります。
 ① 適用法令、適用規格
  JIS規格の引用に関して、JIS B 8570-1及びJIS B 8570-2 の引用規格の追記が必要になります。
 ② 用語の定義
  従前の最大流量、標準流量、最少流量などを、限界流量、定格最大流量、定格最少流量などに変更し、それぞれの説明が必要になります。
 ③ 型式
  すべてのメータが新基準の型式承認を新規登録するため、型式番号が変わります。
 ④ 性能
  メータ取付部口径ごとに新基準における定格最大流量Q3、計量範囲Q3/Q1の指定が必要になります。特に、計量範囲Q3/Q1の特定が重要となります。その他として定格最大流量時の圧力損失が0.063MPa以下となります。
 ⑤ メータの表記
  従前の標準流量から定格最大水量Q3、計量範囲Q3/Q1の表記となり、新たに水平配管Hなどが追加されます。
 ⑥ 表示桁数
  従前は、標準流量の範囲で立方メートル最少表示桁数が定まっていましたが、新基準では、定格最大流量Q3の範囲で定められます。これに伴い、取付部口径、30・40・100㎜の最少表示桁数が1桁増えることになります。

  上記は、従前購入仕様書に明記されていれば変更が必要となり、明記されていない場合でも、性能として計量範囲Q3/Q1の明記が求められることから、購入仕様の見直しが必ず必要になります。
(3)給水条例
  多くの水道事業体では、水道料金の算定に当っては口径別料金算定としているものと考えます。この口径については、給水管口径、メータ取付部口径、メータ口径などと明記されていると思います。新基準においての口径については、メータ取付部の口径としていることから、給水条例の改正が危惧されるところですが、メータ口径と明記されていても、取付部の口径と解していれば改正は必要ないものと考えます。ただ、今後の給水条例の改正の際には、変更することが望ましいと思います。
(4)使用メータ選定基準
  メータの使用は、最大8年間もの長期間の使用を想定し、メータの耐久性や適正な計量の継続確保の面から、計量法に定める計量範囲(旧基準では、最少流量から最大流量まで)は計量の限界値と考え、これとは別に、適正使用流量範囲、1日当りの使用量、月間最大使用水量等を示した独自の「メータ口径選定基準表」等を定めている事業体も多いと思います。
  新基準のメータにおいても、計量範囲としては、定格最少水量から定格最大水量まで(瞬時等短時間では、限界水量まで)となり、従前の考え同様に、定格最大水量近くの水量で長期間継続して使用する場合、適正計量の確保が危惧されるところです。
  このようなことから、従前同様に「使用メータ選定基準」等が必要と考えた場合、新基準では性能が良くなることも含んで、従前基準の見直しも必要になるものと考えます。なお、日本水道協会で作成した「水道メーター選定の手引き」(平成18年3月)には、参考資料として「水道メータ口径別使用流量基準」が掲載されていますので、参考になるものと考えます。
(5)その他
  今後の対応、準備として気になるのは、新基準のメータ価格ではないかと思います。メータ検定が従前の2点から3点検定となることで、検定に時間を要することになり価格アップが想定されるところですが、現時点ではメーカーからの価格公表はありません。

  今後、日本水道協会及びメーカーなどから、様々な新基準に係る情報が出されてくるものと考えますので、積極的な情報を取得する体制としておくことで、遺漏なく余裕を持っての対応なり準備が可能になるものと考えます。

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