≪索 引≫
  1. 中高層建物への直圧直結給水
  2. 中高層建物への増圧直結給水
  3. 連合給水管
  4. 水道メータ
  5. 流量計算
  6. トラブル
  7. 1 事前相談
    2 所有者の同意、承諾
    3 工事費
    4 通過土地所有者
  8. その他
  9. 1 要領、要綱、基準の扱い
    2 長期中止栓の扱い
    3 その他

I. 中高層建物への直圧直結給水

【1】 一般住宅建物(2階建て、理容店)屋上にボイラー等給湯装置を設置する場合、三階直圧給水と見なすか。

【考え方】

事業体によっては、三階建てあるいは五階建て建物など階高によって、配水管の配水圧力などに条件を設けている場合があります。 この事例では、三階建て建物への給水に条件が設定されていると仮定します。
事業体によって様々な考え方が有り、屋上の庭木への散水栓については、通常生活には直接支障ないとの判断から、申請者に何らかの確認をとった上で、 三直と見なさないケースもあるものと思いますが、この事例での建物は、理容店のため屋上の給湯装置は、営業上重要な設備であり、 常に最低作動水圧を確保することが求められることになり、配水圧力及び最低作動水圧を考慮した流量計算を条件とすることが必要になります。

【2】 五階建ての集合住宅で、現在は受水タンクを設置し貯水槽水道としているが、配水圧力の条件から、直圧直結給水が可能な地域であるため、受水タンクを撤去し直圧給水としたいが、その場合の求められるその他の条件は何か。

【考え方】

(1) 引き込み口径
当初、貯水槽水道とした理由には、当時の配水圧力では五階までの給水が無理であった場合や同時使用水量(複数世帯で同時に使用した場合の水量)に 対応するためなどが考えられます。通常、受水タンクへの流入管口径と比べ吐出管口径(加圧ポンプ以下口径)が 1ランクから2ランク大きくなっている場合が多いものです。 直圧直結給水に切り替える場合は、流量計算を行い、 建物内配管も含め引き込み口径についても検証することが求められ、引き込み口径の増径が必要になる場合が多くなります。

(2) タンク以下の配管
貯水槽水道の場合、タンク以下については給水装置ではないため、使用材料についての条件が給水装置材料に準じるなど、 あいまいな場合が多いものと思われます。しかし、直結給水に切り替える場合は、厚生省令第14号(厚生労働省令第6号)の 「給水装置の構造及び材質の基準に関する省令」に適合していることが求められます。ただ、切り替える建物は建築後、相当年数が経っている場合が多く、 厳密に基準への適合を求めると、不適合となってしまうケースが多くなります。直圧直結への変更は、水の安全性、おいしい水の供給、エネルギーの効率性等々、お客さまは勿論のこと水道事業体にとってもお客さま満足度に直結するものと考えます。そこで、事業体によっては、耐圧試験を1.75Mpaではなく0.75Mpaと定めることや、既存使用材料の適合判断がつかない場合は、水質検査や浸出試験を求めそれによって適合の判断をしているケースがあります。但し、有害性が指摘されている鉛管などの使用が明らかな場合は、改善を求めることになります。

(3) 各戸メータ
従前の貯水槽水道においても公設の各戸メータ(子メータ)が設置されている場合は、メータはそのままの使用となりますが、 メータ回りの配管や、メータBOX(パイプシャフト)が現在の基準と異なる場合、必要に応じ改善を求めることになります。 配管では、ボール式止水栓や逆流防止弁の設置、メータユニット設置の義務付け、パイプシャフトでは、メータ設置スペース、扉の寸法、メータ取替え時の排水処理など、 現状のままでは支障となることが考えられる場合は改善が必要となります。
各戸メータが未設置の場合や私設メータであった場合、新たに公設メータを設置する時も上記の改善が求められますが、 事業体によっては公設メータの設置を認めない場合や、設置に当っての条件承諾書等の提出が必要なケースがあるものと考えます。

(4) 親メータ
貯水槽水道では、検定期間満了に伴う親メータ取替え時には各戸の断水はありませんでしたが、 直圧直結に切り替えることで各戸が断水となるため、メータバイパスユニットの設置を義務付けることも考えられます。 ただ、各戸メータの使用者が限られているなど事前に断水についての了承を得ている場合は、除かれるものと思います。

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II. 中高層建物への増圧直結給水

【1】 6階建て200世帯のマンションで、現在は貯水槽水道であるが、駐車スペースを広げるため受水タンクを撤去し増圧直結としたいが可能であるか。 なお、給水管の引込み口径は50㎜である。

【考え方】

まずは、当該地域で水道事業体が保障する配水能力及び配水圧力が問題となります。増圧方式の場合、能力だけを考えると配水圧力には関係なく、 配水管から水を引込み、所定の圧力で給水します。しかしながら、増圧ポンプは、配水圧力低下時等吸い込み側の水圧が一定の値よりも低い時には自動停止等の措置をとることになっています。また、配水圧力が低い場合は、近隣の住宅への影響も考えられます。そのため、配水管の口径や配水圧力が一定の条件を満足していることが必要になります。
次に、配水圧力が問題ない場合(当該水道事業体で増圧直結が可能な地域と判断した場合)は、200世帯での使用について、 配水圧力、引込み口径も含めた流量計算が必要になります。計算結果によっては、引込み口径や設置する増圧ポンプ以下の口径を見直すことも考えられます。
加えて、水道事業体で要綱、要領などで定められている、逆流防止措置や、維持管理などが必要となります。
既存配管及び各戸メータについては、前項2を参照願います。

【2】 5階建て15世帯の建物で増圧直結給水を計画しているが、水道料金の面から直圧直結の共用水栓を設置しなくても構わないか。

【考え方】

増圧ポンプ設備には、停電などポンプ停止時を考え、配水圧力により可能な高さまで給水できるバイパスの設置を求めていると思いますが、通常、ポンプが停止すると高層階の住居の断水が考えられます。その際、直圧直結の共用水栓があれば、断水世帯への水の供給が可能となります。住戸用に公設メータが設置される場合、共用水栓にもメータの設置が必要となり、基本料金を含めた水道料金の負担となりますが、停電や増圧ポンプ設備の故障を考えた場合、共用栓の設置が望まれます。
水道事業体によっては、「増圧給水設備設置条件承諾書」の提出をもって増圧直結給水の承認を行い、 その条件の中で直圧直結の共用水栓の設置を義務付けることや、要領、要綱などで義務付けていることが多いと思います。

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III. 連合給水管

【1】 連合給水管からの新設分岐、または増径の分岐替えで明らかに全体の容量が不足すると考えられる工事申請があった場合の対応について。

【考え方】

給水条例、給水条例施行規定、給水装置施行規準、施行要領などで、給水装置の新設等の承認する内容として当該給水装置の新規所要水量が、 分岐予定の配水管や給水管の給水能力の範囲内であること、そして給水管の口径は、所要水量及び同時使用率を考慮して適当な大きさにしなければならないことが 明記されていると思います。配水管からの分岐口径については、通常、配水管口径の2段落とし以下の口径としていることが多いと思われますが、厳密には、配水管の配水能力を計算した上で当該給水装置の所要水量から判断します。
連合給水管から分岐する場合も同様に、工事申請の承認に当っては、連合給水管の給水能力、 当該給水装置の所要水量など一般的な流量計算に基づく指導が必要になります。ただ、同一の連合給水管を使用している者などの利害関係者の同意を得ており、 使用水量の実績に基づく流量計算を行い主任技術者が支障ないと判断した上での申請は、それを受けざるを得ないものと考えます。 支障が生じた場合の改善策などを明記した文書(念書など)を、申請者(給水装置所有者及び使用者)に注意を促す目的で提出させる必要性もあるものと考えます。

【2】 連合給水管から分岐されている中の1件だけからの口径変更(増径)申請について、流量計算上問題はないが、 今後、2件目、3件目と増えてくると支障となる場合の対応について。

【考え方】

給水装置は、お客さまの財産であるため、将来を見越す必要はなく、現状での判断で構わないと考えます。

【3】 私道にφ75㎜の給水管が入っており30世帯で使用している。 この私道に面した土地を購入しこのφ75㎜の給水管から新たに給水管を引込む場合、どこまでの承諾が必要になるのか。

【考え方】

私道の所有者、当該給水管φ75㎜の所有者、そしてこの給水管を使用している30世帯に引込まれている給水装置の所有者及び使用者などの利害関係者すべての承諾が必要になります。 この承諾の目的とするものは、給水可能の可否だけを判断するものではなく、関係者の権利を侵害することのないように配慮するもので、工事を円滑に施行するための措置と考えます。承諾の確認として、承諾書の提出を求めることや、施行承認書等に承諾の欄を設けている事業体もあると思いますが、利害関係者すべての確認や承諾したのが本人であるかの確認が難しく、後々問題が発生するケースもあるものと思います。ある事業体では、新設等の申請は工事施行承認申込書が必要になり、この申込みをする時点で既に利害関係者の同意はすべて得ている内容となっています。 申請に当って、このようなシステムとすることも、今後、必要になってくるのではないでしょうか。

【4】 連合給水管φ50㎜からの分岐栓数を、当市ではφ20㎜の一般世帯で10栓程度と説明しているが、他市においては20栓まで認めるというような話も聞いている。窓口における分岐可能栓数の対応について。

【考え方】

分岐可能件数については、本来、現場ごとに流量計算を行い決定することになりますが、一定の配水圧力が確保され、それを把握していれば、 標準例として定めておくことで迅速かつ公平な窓口対応が可能になるものと考えます。 この事例の場合、「φ20㎜の一般世帯で10栓程度」が当該市での標準例なのでしょう。
市町によって配水管網や配水圧力が異なることから、分岐可能件数の考え方も異なってきます。末端の分岐部で想定する水頭は、 15mとすることが望まれますが、配水管の最低水圧(水頭15m以下の場合)によっては、必要とする水頭を下げざるを得ないと考えます。当該市と比べ、分岐部の水頭を低く設定した場合や配水管での水圧が高い場合には、分岐可能件数を20栓とする市町も有りえると考えます。
連合給水管からの分岐については、新たに分岐して使用するお客さまと共に、既に連合給水管から分岐使用しているお客さまに対しても、水圧低下や水量不足などの影響が出ないように、 設計に際しては、流量計算で確認することが求められます。

【5】 不動産業者から連合給水管の所有者が誰であるかの問合せが多い。これは、新たに分岐するに当って、誰の承諾を得ればよいかということで、どの範囲までの承諾を求めるか問題となるケースが多い。

【考え方】

給水装置はお客さまの財産ですが、現段階での所有者を把握することは難しいと考えます。当初、給水管を引込み、給水装置工事を申請した者が通常、所有者と思われますが、その後の代替わりや、土地建物の売買があった場合など、現所有者を特定することはできないと考えます。連合給水管の場合は、加えて、当該連合給水管を使用している者すべてで共有していることも考えられます。
承諾に関しては、事例Ⅲ-3のとおり。

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IV. 水道メータ

【1】 メータ設置箇所については、水道を使用する敷地内であって、当該給水装置の分岐する配水管或いは給水管の直近とすることが望まれるが、 分譲住宅等宅造の開発では、当初の建築計画が往々にして変更となり、給水管の引込みが庭先となってしまうことがある。 この場合、新たに引込み替えすることを求めるのか。

【考え方】

メータの設置位置などについては、給水条例等で規定されていると思いますが、基本となるのは、衛生的な場所で損傷の恐れがなく、 そして、検針などの点検及びメータの取替えが容易に行える場所とすることが必要です。合わせて、給水引込み分岐部の直近とすることで、 事業体によって行っている維持管理分界点(漏水修繕費用負担区分点)を明確にしています。
宅造等の開発であっても、建築計画を基に上記条件を満たす位置に給水管を引込み、メータを設置しなければなりません。 しかし、建築工事用として給水管を引込み、メータ設置、工事用水栓設置など一連の工事が完了した後に当初計画の変更があった場合、 第一に検針や取替えが容易な場所(衛生面、損傷面も考えた上で)を重視し、給水管引込み位置の変更は、 給水管の埋設位置の把握を促す(所有者等への意識付け)上でのお願い程度にとどめておくことが良いのではないでしょうか。

【2】 家族構成の変更(減少)に伴い使用水量が減少し、メータ口径を小さくしたいとの要望、問合せが多数ある。 既存配管はそのままで、メータだけの口径を小さくした場合、その後の使用者の変更等によっては、 メータの適正流量をオーバーするなどメータ機能への障害が考えられると説明するがなかなか理解を得ることができない。

【考え方】

メータ口径の選定に当っては、使用目的、設置器具、使用人数などから水道使用量を算出し、水栓等の同時使用を考慮した上で、適正使用流量範囲、瞬時的許容流量を満足するメータ口径を選定します。事業体では、メータ口径選定基準などを定め、それに準拠しているものと考えます。また、給水管の口径は、分岐口径と同等又はそれ以下でなければならず、給水管の口径を一旦軽減した場合は、その下流部での増径(先太り)は、認めていないケースが多いものと思われます。(増圧給水などは除かれます。)
以上から、既に使用中のメータは、当該建物(施設)における水道使用から選定されたものですので、使用実態の変更に伴い、設置器具の見直しを行うなど、先太配管を解消することによって、メータ口径の軽減が可能になるものと考えます。
しかしながら、家族構成の減少によってお年寄り一人の世帯となり、基本料金以下の使用量となっている場合など、お客さまの立場、実態を考えた対応も必要と考えます。お客さまからメータ口径軽減の要望があった場合は、現状の使用実態とメータ口径選定基準を照らし、問題ないと判断したものについて、2段階までの軽減を認めている事業体もあります。
なお、水道メータについては、平成23年度の新JIS化への移行に伴い、これまでの、口径による分類から、性能(適正流量)による分類となるなど、各事業体のメータ採用によって、大きな変化が考えられます。

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V. 流量計算

【1】 使用水量の算定について

中核病院の使用水量の算定で、指定事業者が同等の病院での実績値に基づき計算してきた。市の基準(建物種類別単位給水量・使用時間・人員表)から、類似する総合病院での算定結果と大きな差が生じた。

【考え方】

当該市の基準としているのは、「空気調和衛生工学便覧」と思われます。これによると総合病院では、 使用時間1日当り16時間として、1床当り1500ℓ~3500ℓ、或いは述べ床面積㎡当り30~60ℓとなっており、これを基に計算すると過大な使用水量となってしまうことも少なくありません。病院の場合は、一時に多量の水を使用する施設であり、常時一定の水供給が必要で断水による影響が大きい施設であるため、タンク式給水が採用されており、過大に使用水量を算定した場合、タンク内の滞留など水質への影響が考えられます。
使用水量の算定に当っては、備えている設備などにより各病院によって異なると思いますので、それぞれの実態に則した計算が必要になります。他の同等病院の実績値の中で、入院病棟や外来病棟など個々のデータは、参考になるものと考えますが、 病院全体に適用するのは、難しいものと考えます。

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VI. トラブル

【1】 事前相談

給水条例により、給水装置工事は、指定事業者が工事着手前に水道事業管理者の設計審査を受けなければならない。
しかし、指定事業者の選定が建設業者やハウスメーカー等より後になることから、工事申請前の指定事業者以外からの相談(問合せ)が多い。
問題は、この相談経過によりその後の設計審査の承認も強要される場合である。当市では、相談段階での見解、了解は、指定事業者が作成する同等の図面、流量計算等があったとしても、設計承認とは別としている。
特に具体的な資料がない相談は、当市の工事施工基準(施工要領など)記載の標準についてのみを教えている。 しかし、相談者から不親切とか行政サービスの怠慢のようなお叱りを受けることが多い。具体的事例では、給水方式(直圧直結給水、増圧直結給水、 タンク式給水等)が相談段階で決まらないと、基本設計ができない、後からでは変更ができないなどと、判断を強要される。

【考え方】

窓口へ来る相談者は、何かしらの回答を必ず求めるものです。水道に関して初めて窓口を訪れる市民から、給水装置に精通している専門技術者まで、窓口での曖昧な対応によっては、大きなトラブルとなることも多く、丁寧で的確な対応を行わなければなりません。
窓口での相談と実際に指定事業者から申請され設計審査を行う時点での指導は、詳細な点は別として大筋で同一とすることが望まれます。しかしながら、窓口では、具体的な設計図などの資料が示されることが少ないため、相談者の要望が実現できるための条件を明確に伝えることが必要です。
例としては

① 工事費について

「給水装置はお客さまの財産です。工事に際しては、お客さまが直接指定工事業者に施工を依頼するか、 建物工事を行う工務店を通して依頼することになります。工事費用は、 現場の状況によって大きく異なりますので数社から見積もりをとることをお勧めします。」

② 分岐工事の承諾について

「給水管からの分岐については、その給水管の所有者や使用者、土地所有者などの利害関係者の承諾が必要となります。」

③ 連合給水管からの分岐件数について

「当市の標準では、φ○㎜の給水管から分岐可能なのは、φ○㎜で○栓となっていますが、実際には、指定事業者(給水装置工事主任技術者)による 使用給水器具等を考慮した流量計算を行った上での判断となります。」

④ 給水方式について

「当該配水管の水圧は、おおよそ○Mpaですので、指定事業者(給水装置工事主任技術者)において使用給水器具等を考慮した流量計算を行った上で、 直圧直結給水や増圧直結給水、タンク式給水等の給水方式の検討をお願いします。」

以上のような、事例に応じ、窓口担当者が統一した見解を持っておくことが必要となります。また、特殊な事例で対応した事項については、早い時点で窓口を担当する全員が確認することで、情報の共有化が図られます。 このように、ある程度統一した窓口対応を行うことで、「言った言わない」などが原因となるトラブルに対し、明確な受け答えができるものと考えます。

【2】 給水管撤去に関する同意について

給水管分岐工事の際、同一掘削内に隣の駐車場に引込まれている、現在は使用していない第一止水栓までの給水管を発見した。駐車場所有者に確認したところ、使用予定がないとのことであったので、口頭で撤去の同意を得た上で、ついでに分岐工事をしている施工業者に撤去工事を依頼し閉栓してもらった。 その後、その駐車場の所有者が変わり、新たな所有者が来所し、給水管があることを前提に土地を取得したことを主張して、市において復元するよう求めてきた。

【考え方】

各水道事業体で定めている給水条例では、給水装置を使用する見込みがなくなった時は、所有者等の責任において撤去するという給水装置の撤去義務が規定されていると思います。 また、管理者(水道事業体)は、給水装置が使用されていない場合で、水道の管理上特に必要があると認めた時は、所有者等の同意がなくても当該給水装置を配水管等の分岐部から切り離すことができる給水装置の切り離しも規定されていると思いますが、通常、円滑な処置を図るため、所有者等に説明し同意を得た上で施工することが望ましいと考えます。
この事例の場合、当該給水管の撤去が特に管理上必要かどうか、また、関係のない工事で判明したその時点で施工する緊急性があるのかどうかが伺い得ないため、同意を得ることに関し、慎重かつ確実に行うことが必要であったと考えます。同意については、給水装置撤去申込書、切り離し申込書、撤去承諾書など定められている書式をもって、所有者等の本意を確認した上での施工が望ましいと考えます。ただ、当該駐車場の売買契約内容は、水道事業体としては知り得ないことです。撤去に当っては、当時の所有者の同意を得たことは確かですので、使用見込みがない給水装置の残存は、漏水の危険性や水質悪化の危険性などがあることについて丁寧な説明を行い理解を得ることになるものと考えます。
なお、適正な処理に基づき給水装置の切り離しを施工した場合(今回のケースでは、所有者の同意を得て、管理上撤去が必要と判断したこと。)で、 切り離した給水装置により再び水道を使用しようとする時は、申請者負担での給水装置の新設工事となることが給水条例で規定されていることと思います。

【3】 工事費のトラブル

給水装置工事の施工承認、設計審査を終え、工事はすべて完了しており、工事検査を受ければ(指定事業者からの竣工図提出、検査手数料納付、現地検査を終えれば)給水装置工事の一連の手続きが完了する状況の段階で、施工主(開発業者)が給水装置窓口を訪れた。目的は、入居が近いためメータを早く設置し水道を使えるようにしてほしいとのことだった。市としては、完了検査が終わっていないためメータを出庫し設置することはできない旨説明するとともに、早々当該給水装置工事を申請、施工している指定事業者に工事検査申込みをするよう指導したところ、施工主である開発業者からの工事費が未払いのため工事検査申込みを拒否してきた。

【考え方】

給水条例では、工事の施行として工事が完了したときは、工事検査を受けることが規定されているものと思います。また、施工規程や施行規則、 施行要領などでは、工事完了後速やかに工事検査の申請をしなければならないとなっているものと考えます。 また、指定事業者が施行し、市の工事検査が終了していない給水装置により給水する場合は、給水を拒否できるとなっているものと思います。
これらの給水条例などについて、指定事業者はもとより、施工主にも丁寧かつ十分な説明を行い理解を得ることが必要となります。 この事例では、工事費の支払いに関することで、市が深く介入することは避けなければなりませんが、 最終的には使用者となるお客さま(市民)に迷惑がかかることになるため、スムースな解決に向け、施工主から指定事業者へ給水の依頼をしてもらうとともに、 指定事業者にも市から連絡(指導)しなければなりません。

【4】 通過土地(給水管が埋設されている土地)所有者とのトラブル

給水管(メータ一次側)が隣家の敷地を通っており、その給水管から漏水が発生した際、初めて隣家住人が他の給水管が自分の敷地を通っていることを知り、直ちに撤去するよう市に申し入れてきた。

【考え方】

 給水装置は、それぞれの所有者の財産であり、撤去や移設等の工事は原則として当該給水装置の所有者が行うことになります。この事例の場合、まずは漏水を修理することが先決です。市によって漏水修繕の費用負担区分が異なると思います。メータ一次側は市の負担となっている場合や宅地内はすべて所有者の負担で修繕するなどが考えられますが、どちらにしても漏水の発生している敷地所有者に対し、このまま放置しておくと陥没が発生するなど当該敷地にも影響が出ること、貴重な水資源が流出することなどを丁寧に説明し、修繕工事の了承を得ることが求められます。
   給水管が他人の敷地を通っていることによるトラブルは多いものと考えます。基本的には、個人の財産に関わるもので、いわゆる民民の問題ですので市としては深く介入することは避けなければなりません。しかし、当事者間の円満な近所付き合いや良好な関係を継続するための助言的対応を行うことも必要と思います。給水管の撤去及び移設については、当該給水管所有者に対し、隣家から強い要望があること、将来において決して好ましい状況ではないことを説明し、早々に移設が無理な場合は、建替えなど改修工事に合わせ施工するなどの考えを隣家に穏やかに伝え理解を得るようアドバイスすることなどが考えられます。

   給水管を引込んだ当初には、何らかの承諾に基づき施工したものと考えますが、現所有者に継承されていないなどと思われます。仮に、通過土地に関する同意書、承諾書が存在した場合でも、それを根拠に土地の占用を強く正当化することは差し控えるのが望ましいと考えます。
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VII. その他

【1】 要領、要綱、基準の扱い

(準備中)

【2】 長期中止栓の扱い

(1)長期中止中の分水部分の閉塞について
 水道管理図、給水装置竣工図で、配水管(ダクタイル鋳鉄管)φ100㎜からφ25㎜の給水管が宅内に引込まれていることが確認できるため、その既存給水管φ25㎜をそのまま利用し、事務所兼店舗を建築、φ25㎜メータを設置する給水装置工事の申請がなされた。
 内部工事に先がけ、建築に際しての工事用(仮設用)としてφ13㎜メータ、蛇口1栓設置の工事が申請、竣工し、建物完成の平成13年9月までの約2ヶ月間使用した。
 建物並びに給水装置工事の完了に伴いφ25㎜メータを取り付け、通水確認をしたところ、予定した水量には程遠くφ13㎜蛇口の半分にも満たない水の出方であった。調査した結果、分水部分のサビによる閉塞が考えられたため、宅内止水栓(第一バルブ)から断続的な排水作業を行うなどの対策をとってみたが、改善されなかった。どうしたら良いのか困り果て、指定事業者が市に相談してきた。
 当該箇所は、昭和47年4月に給水管を引込み給水を開始し、昭和61年12月に前面道路の配水管がダクタイル鋳鉄管に布設替えされ、給水管も第1バルブまで取り付け替えされている。その後、平成5年8月まで使用され、今回の建物建築まで中止中となっていた。
 原因は、予想どおり分水箇所のサビによる閉塞であったが、当時採用していた銅制の防食コアは規定どおり入っていた。

【考え方】

 給水条例等により、使用見込みがなくなった給水装置は、当該給水装置の所有者等に撤去、切り離しを行う義務を課していると思います。この事例では、平成5年から約8年間使用を中止しており、所有者等からの申し入れがあった場合や長期中止状態の確認がとれた場合には、使用見込み無しと判断して撤去、切り離しを行ったことと思います。しかしながら、中止した時点では、将来の使用予定について市として判断することはできず、長期の中止栓として残ってしまうケースも多いものと考えます。ダクタイル鋳鉄管などの鉄管から分岐された長期の中止栓は、分水部分のサビによる閉塞を考えておかなければなりません。そのため、各水道事業体では、様々な防食コアを採用していますが、当該給水管の分岐を行った時点(昭和61年12月)での防食コアは、それほど穿孔面との密着性に優れているものではないものと思われます。この事例の場合も、ゴムで覆われていない銅コアで、多少の隙間があるため、長年にわたる中止状態の中でサビが増大し閉塞したものと考えます。
 今回、当該建物を計画、施工するに当って、給水装置の設計・施工を誰が行うかが問題となります。申請者(建物所有者等)から依頼(委任)された指定給水装置工事事業者(指定事業者)が施工することになります。設計については、設計会社で行うこともありますが、そのチェックは指定事業者で行わなければなりません。ここで重要になるのは、指定事業者が当該工事に選任した給水装置工事主任技術者(主任技術者)の職務と考えます。誠実に行なわれなければならない職務の一つに、「給水装置工事に関する技術上の管理」があります。これは、工事に関する事前調査及び計画から施工、検査に至るまでの一連の技術面での管理を行うことであり、この事例の場合、既存のφ25㎜の引込み給水管が材質面や流量面からも将来にわたって使用可能かどうかの調査、確認を行なわれなければならないものと考えます。過去の使用状況を調べることによりサビによる閉塞の可能性が推測でき、第一バルブを開ける(流量確認として)ことで、実流量を確認することができます。また、遅くても、仮設としてφ13㎜のメータを取り付けた時点で、予定する流量を満足できないことが判断できたわけですので、建物が完成するまでに給水管の引込み替えなど設計の変更が可能であったと思います。いずれにしても、市の責任において給水管を引込む理由はないと考えます。
 昭和61年12月に給水管の取り付け替えを行ったのは、市発注の工事ですが、仮に当時の仕様である銅コアが入っていなかった場合、施工業者の「かし」とするか難しいところです。その後の長期間の中止状況、主任技術者の職務などを総合的に判断し、「かし」を言及するのは避けることが望ましいと考えます。

【3】 その他

(準備中)

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